コラム「穴熊という往き方」
穴熊という囲いはここ10年で猛威をふるったが既に新作戦ではなく、現代
将棋においては「常識」となった感がある。
対振り穴熊、振り飛車穴熊という戦法だけでなく。矢倉から穴熊、美濃から穴熊などバリエーションも豊富になってきている。
現代将棋で重要視されるのはまず「堅さ」なのである。
それは何故か?
将棋というゲームを徹底的に考えるには二つの方法がある。
一つは初形から考えるというやり方で、もう一つは終了形から考えるというやり方である。
そして、よりラディカルなのは後者である。
これは、ゲーム理論で「後ろ向き帰納法(backward induction)」と呼ばれる手法と似ている。
後ろ向き帰納法とは完全情報ゲーム(将棋、チェスなどのように全ての意思決定点において、これまでにとられた行動や実現した状態に関する情報が全て与えら
れているような展開型ゲームのこと)
でゲームが終わった状態(将棋では詰み)から遡って調べていくという手法だ。
簡単に言えばこういうことである。
詰みの状態→寄せの状態→中盤の状態→序盤の状態と遡って思考するということだ。
先に詰ますためにはどうであればよいか? それは先に寄せればよい。
先に寄せるためにはどうであればよいか? 相手より玉が堅く、攻めが切れなければよい。
相手より玉が堅く、攻めが切れない状況で寄せに入るにはどうすればよいか? 駒得をしていたほうがよい、駒の効率がよいほうがよい。
・・・・・
という風に将棋を考えていくことである。
「光速の寄せ」の異名を持つ谷川先生の将棋入門系の著作に同じような考えが書いてあった記憶がある。
終盤・寄せから遡って考えると玉の堅さというファクターの重要度が増すというわけである。
そして、その思想の究極の実体化が穴熊という囲いだったというわけだ。
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